ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破を自分なりに解釈してみる

ヱヴァンゲリヲン 破」見てきました。本当に素晴らしい映画!終始wktkでした。
金曜ロードショーの「序」でもそうでしたが、登場人物の感情の高ぶりに同調してしまい、何度も泣いてしまいましたよ。
公開中にもう1度観に行きたいと思っていますが、その前に感想をまとめておきます。彼女と2人で観て、その後映画の解釈を語りあった内容です(長いです・・・)。自分ひとりでは絶対気付かなかった考えもあるので、次観るのがホント楽しみです!

以下、ネタバレのため閲覧注意!!



アスカは旧世紀の象徴

謎解きするにあたって、友人が公開直後に語っていた話を叩き台にしました。簡単にまとめるとこんなような内容です。

旧世紀とは、監督にとっては10年前の作品(前世紀のエヴァ)であり、捨てるべき、そして超えるべき過去の栄光。そんなものはもう要らない、とぶっ壊す、否定する必要があった。それが初号機に喰われるシーンの意味だと思われ。
同時に、旧世紀に思いを馳せるバブル世代や、激動の新世紀に立ち竦む人々に対する声援でもあるよな。
文字通り、新世紀ヱヴァンゲリヲンをやりたかったんだなあと思いますた。

この解釈はすごく良いなと思いました。面白い!!
この解釈を足懸りに、以下のような発想でストーリーを追ってみました。

シンジは現在、レイは未来の象徴

今回の作品は各キャラクターが、(シンジを中心に)ひとりの人間の内面世界を体現しているのではないか。そう考えて以下のような役割を割り当ててみた。

アスカ→過去の自分
レイ→未来の自分
シンジ→(その間を行き来する)現在の自分

あとマリは超未来に出会う(かもしれない)、俺TUEEEE!!な自分ww


以下、なるたけ時系列順にまとめ。
(各登場人物のセリフは記憶による意訳です)

孤独の壁にぶつかるアスカ

上空から飛来する巨大使徒(アニメ版でいうサハクィエル)との戦闘で、アスカの自信は脆くも崩れ去る。自分一人で使徒は倒せると主張するアスカ。3人の協力なしに奇跡は起きないと一蹴するミサト。そして実際に、使徒はシンジが受け止め、レイが身を挺して使徒の核を捕らえることで、何とか殲滅することができます。

このシーンにはまさに3者の立場を象徴するものとなっています。
自分自身を天才と評し、他人との壁を作ってきた自分。でも自分ひとりの殻に篭っていては何もできないと気づき、塞ぎ込むアスカ(過去の自分)。エヴァに乗り戦うことに悩みながらも、目の前の敵に果敢に挑み、痛めつけられ押しつぶされそうになるシンジ(現在の自分)。他の2人の行動を冷静に見つめ、手を差し伸べるレイ(未来の自分)。レイはアスカに欠けた母性という要素を持つ、「なりたい自分」でもあります(それゆえに忌み嫌うわけだけど)。
いずれが欠けても、このシーンは成立しません。

またシンジは戦闘後、ゲンドウに『よくやった』と褒められ、自分の価値を肯定できる可能性に気付きます。レイはといえば、シンジの為にゲンドウとの食事会を企画する等、思いがけない心の変化が生まれたり。アニメ版ではむしろチームワーク・協調という印象の強い場面だったけれど、今回は全く違いますね。3者の立場の違いを示唆し、それぞれに心境の変化をもたらす重要なイベントであると思います。

シンジに喰われるアスカ

今回アニメ版との最も大きな違いは、参号機パイロットが、トウジ→アスカになっている点。ゆえにダミーシステム初号機に撃破される対象もアスカとなったわけだけど、さらに初号機が参号機を喰う描写も追加されています。これは前述のとおり、過去の自分を否定する場面と考えて良いと思います。
そのアスカも、実験前のミサトとの電話のシーンから心の成長が垣間見えますし、ちょうどこのタイミングで、参号機の日本上陸によって弐号機も封印されています(バチカン条約)。これで過去を象徴する要素は、完全に消え去ることになります。

アスカが旅立つ前にミサトに告げた『ありがとう』。そしてその直前にレイからの留守電での『ありがとう』。最後に、自分の世界に拘り続けた過去の自分を、現在の自分であるシンジ(初号機)が飲み込むその場面に、穏やかなあのBGM。

「いつまでも絶えることなく 友達でいよう」
「今日の日はさようなら またあう日まで」

過去の自分への決別であると共に、「またいつか逢おう」という共生を願う言葉。

だから次回作「Q」では、新生アスカ・復活ということになるのでしょうね。

シンジに対する父の言葉

『他人を犠牲にしてでも、自分の望みを果たさなければならない。大人になれ』というゲンドウの発言について。シンジはアスカを殺すことを望まなかった、つまり自分の希望通りに行動したのでは、、、という疑問が生じました。しかしシンジが一番望んでいたのは、果たしてアスカを助けることだったのでしょうか?そう考えることで糸口が見つかりました。つまりこういうことです。

シンジの本当の望みは、父であるゲンドウに褒められることです。それが自分自身の価値・存在理由を肯定できる唯一の方法と気付き始めています。すなわち使徒を倒すことが本当にやりたいことであって、アスカの生死は究極的にはどうでも良い。「使徒(に取り込まれたアスカ)を倒すことが、お前の望みじゃないのか?」という問いがゲンドウの真意ではないでしょうか。
もちろんこれは、作品(監督)から客席に向けたメッセージでもあるはずです。

何度も出会う病室の天井

ダミーシステム初号機による参号機撃破後、シンジは激昂し父に怒りをぶつけますが、突き放され強制排除されます。目を覚ましたシンジが、病室の天井を見て『またここだ』と呟くシーンがアニメ版以上に印象的でした。もっともこの描写は10年前の作中で同じような意図で登場してますし、単純に短時間のうちに同じシーンが繰り返される効果もあったでしょう。
使徒との初の戦闘(サキエル戦)後、シンジは初めて病室の天井を眺めます。その後、悩み・苦悩→戦い→目を覚ますと同じ天井を眺める、というシーンが何度も繰り返されるわけです。「見知らぬ天井」との出会いを自我(自意識)の目覚めと考えると、幾度も考え、もがいて、結局同じところに行き着く、行き場のない思考の循環を象徴していますね。

エヴァの覚醒

ゼルエル戦もベースの流れはアニメ版を押さえつつ、全く別物を作り上げているあたり本当にニクイ。ここでは、マリが弐号機で戦うわけですが、過去の象徴であった弐号機に、超未来的・無敵のマリが乗るわけです。超未来的というのは、誰かに求められるとかそんなの関係ない、「楽しいからやる」という完全自己補完型の性質のことです。シンジやアスカが自分の中だけでは補完できず、他人の評価を求めるスタンスとは対照的ですよね。
あと使徒については、私は他者のことかなぁとイメージしたのですが、彼女はそれも自分自身じゃないかと言っていました。自分であると思いたくない自分、つまり悪意とか妬みであり、惨めな自分のことだと。ああそうかもなぁと。
そんな自分は誰にも見せたくない、知られたくないから、ひたすら強力な壁(ATフィールド)を作って殻に閉じこもる。その殻を打ち破るのは容易ではないけれど、超未来的な自分(マリ)になれたら簡単に破ってしまうのかもしれないね、という期待ですかね。そのマリに対して、またしてもレイの『ありがとう、弐号機の人』という言葉が泣かせます。

零号機の自爆も虚しく、無傷のゼルエルにレイはエヴァごと飲み込まれてしまいます。この展開も相当驚きですが、やはり初号機の覚醒がシンジの意思で行われる場面はさらに驚きました。

新世紀では圧倒的に男らしいシンジ君。

ヱヴァンゲリヲン 破は、アニメ版から大きく姿を変えた作品となっているけど、中でもシンジのキャラクターの変貌ぶりは強烈です。
最強の使徒ゼルエル戦では、自らエヴァ初号機を覚醒に導いているし、『せめて綾波だけは助ける!』とかっこいいセリフまで吐いちゃいます。
そもそもウジウジと落ち込むシーンがかなり少なくなっています。時間的制約で細かい描写が削られていること以上に、意識的にそういう描写がカットされているように思いました。監督や作品とともにシンジも歳をとり、大人になったんだなぁと感じます。いつまでも旧世紀の何もできない弱い少年ではなかったのだと、実に頼もしく見えました。

エンディングとQへの布石

宇多田ちゃんのテーマ曲が本当に素晴らしい。本人が言うとおり、本当にシンジ君のような子に思えます。そんな彼女の歌詞・メロディー、そして今回の編曲。ちょっと泣きどころが多すぐるよw

また次回ついにカヲル君が登場です。アニメ版では、「無条件に自分を受け入れてくれる他者としての立場」でしたが、新世紀ではどうなるか注目ですね。『今度こそ幸せにするよ』の真意とは・・・。
今回のラストでサードインパクト発動の予兆が起きていましたが、どう展開していくのか非常に気になります。旧世紀では、17体という使徒の数も非常に重要だったはずなのに、今回は大きく変わっているし、当時の意味づけはもう全く通用しませんね。前作の先入観は捨てて観ましょう。

2回目はここを気をつけて観たい

  • キーワードとなる用語がたくさん出てきたので、そこを押さえておく。(ネブカドネザルの鍵とか)
  • シンジのウォークマンの再生曲番に注目。何度も描写があるけど、毎回25とか26(アニメ版の26話に由来?)の決まった番号の気が?何かのタイミングでひとつ数字が進んだようにも見えた?

参考サイトなど

新劇場版ヱヴァンゲリヲン:破の演出が神がかっている件
EVANGELION(新世紀エヴァンゲリオンについての考察、謎解き、解釈)


他の人の謎解きもすごい気になっていたのだけど、これ書くまで敢えて我慢してました。明日から色々読んでみようと思います!